9月号 * anthology           

                 あれから、半年   美濃 和哥

               
                              しと
(被災地はいたるところに)おうごんの少女の尿に流される蟻  
マネキンに顔がないから でもきみの顔がなんだか思ひだせない  
育ててはならない草をはぐくんでいたようだつた 刃物屋へゆく
必要な時だけちょこっと顔を出すあなたは亀のような人ですね  
身の芯にうずく怨嗟を鎮めつついただくふたつ梅干しにぎり
原子雲どこからもよく見えしというわれは見ざりきその下にいき
ああ、と嘴太ひとに似ていしがあらためて人語ならずと思う
やさしくしてと云はれたことが始まりで終はりはただに風にほどける
暗きビルに暗き店舗が眼をあけてひつそりと酒を売る街を来ぬ
みづからの吐きたる息を吸ってゐるビニール袋は手の中の月
電線のカラスが深い傷あとを残す肌色濃きゆうまぐれ
空というは身の何処までを覆うのか髪の先から曇る街角
美しい老年はなしと言ひきりしはわが友にしてその人もなし
白い髭もうワルぶらない寂しげな宍戸錠なり普通の人なり
               
柳澤 美晴   千坂 麻緒   沙羅 みなみ   大音 千紘   萬宮 千鶴子 前川 明人 渡部 光一郎 江田 浩司 さいかち 真 山吹 明日香 さいとう なおこ 佐伯 裕子 稲葉 峯子 大島 史洋
               

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